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市井の荒波にもられるアラサーが、無駄に本心をさらけ出します

思った以上に面白かったので

この映画に出てくる4人のヒロインは、そろいもそろって幼稚で傲慢で馬鹿。これが世の中の女性の共感先というのならば、この映画の作り手や原作者は女性というものをバカにしすぎである。

http://movie.maeda-y.com//movie/01679.htm

 などという酷評を目にしてしまい、「そこまで言うなら、どれほどひどいか見てみようじゃないか」という猫を殺しかねない好奇心に突き動かされて、girlを観に行きました。

加えて相手役の男たち(年下イケメン、格下夫、仕事のライバル、KY彼氏)のキャラクターにことごとくリアリティがないのも問題。彼らがさしたる物語上の説得力もないままにヒロインたちに屈服し、全面的に肯定する展開は、ご都合主義すら通り越してほとんどファンタジーの域に達している。

http://movie.maeda-y.com//movie/01679.htm

 いや、ホント。最初は「こんな男らありえねー」などと観始めはニヤニヤです、ところがぎっちょんちょん。知らず知らずに引き込まれ。ネタ的な意味じゃなく、モトが取れてしまった。期待を裏切られました。良い意味で。

これは、お客さんが共感するポイントを脚本家と監督がしっかり作りこんでいないことが原因といえる。

http://movie.maeda-y.com//movie/01679.htm

 境遇、恋人の有無、職業、養子、もちろん性別に至るまで、僕と主要キャラが共通する部分はありません。むしろ、天敵です。身近にいたら絶対disってます。そもそも住んでる世界が違いすぎて、近づくことすらないでしょう。にもかかわらず、面白かった。面白すぎてテンションが上がりまくってしまい、「いっちょ擁護してみるか」などと思うに至りました。以下、ベタ褒めです。

・劇場内にリア充がいない。
 スクリーンの中にはリア充が満載です。これでもかってぐらい出てきます。むしろリア充じゃないほうを探したほうが早い。っつーかいない、給料高そうだし。等と言いつつ、客席を見てみると、見ているだけで反吐が出そうなカップルは存在しない。せいぜい映画好きの仲良し老夫婦ぐらい。あとは友達同士で映画を楽しむ女子ばっか。
 と、言うのも、この映画。「リアル充に憧れる女子」とか「俳優の○○のファン」なんかが対象で、野郎なんざハナから相手にしていない。あくまでも女子が楽しむ「ガールズムービー」で、「デートムービー」とは180度真逆です。と、いうわけで観に行っても、「やたらといちゃつく、糞リア充ども」を目にすることがないので、精神衛生上非常によろしかったです。ただ、女子だらけの明らかにアウェーな雰囲気に耐えられれば、ですけど。

・お光(38歳・♀・イタい)がカッコいい
 ヒロインの由紀子(29歳・♀・イタい一歩手前)の同僚にして、女の武器をとことん使ってバリバリ業績を上げる営業パーソン。ただし、あまりにも感性がブッ飛び過ぎてて、周囲からは浮き気味。にも関わらず、とにかくカッコいい。「自分が異質である」と自覚していながら、それでもなお自分のスタイルを貫き、なおかつ成果を出して認めさせる。まさにプロフェッショナル、どこのニーチェが言う「超人」です。特に「みんな背伸び~」の辺り。思わずグっときました。思わず惚れそう、いや無理だ。

・テーマの普遍性
 なんだかんだ言いつつも、主要キャラは主要キャラなりに葛藤を抱えているわけです。「こうありたい」という理想があるにもかかわらず、現実の自分はかけ離れている。だからこそ苦しむし、足掻いている。そういう「『なりたい自分』になりたい」という部分に、非常に共感しました。「なりたい自分」とか「自分探し」とか、巷では「スイーツ(笑)」等といわれるものの、テーマとしては非常に古典的です。パっと思いつくだけでも、ゴーギャンの「われわれは(以下略」とか、モームの「月と6ペンス」とか、古くは「オイディプス王」とか、枚挙に暇がありません。
 身もふたも無い言い方をしてしまえば、この作品のキャラ造形ってのは「誰もが憧れる(or共感する)要素」をかき集めた、いわば「女子」の最大公約数です。逆に言えば誰かしら「共感できるポイント」があります(だからこそ、前述の「ポイントを作りこんでいない」という批判がでるんでしょうが。)。そのポイントさえ見つかれば、そこをきっかけに映画に張り込むことができます。ちなみに僕は、容子。あの喪っぷり。っつーか容子がよすぎる。エレベーターのシーンとかたまらない。

と、言うわけで。前日に「盆回り」を聞いて大爆笑した口直しに見たネタ映画のはずが、思った以上に面白く。思わず熱く語ってしまいました。と、言っても、

想定される客層と全くかぶっていない私があれこれ言うのもまた、余計なお世話以外の何物でもないわけだが。

http://movie.maeda-y.com//movie/01679.htm

と言われてしまえば、まさにその通りなわけで。

本日のレビュー「返事はいらない」

返事はいらない (新潮文庫)

返事はいらない (新潮文庫)


短編集なんで、サクっと読めます。中でも「ドルネシアにようこそ」が、大好きです。そういや宮部みゆきも「なりたい自分」で結構書いてます。「火車」とかまさにそれだし。